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グルメな掲示板 過去ログ

  グルメな掲示板の過去ログです。現在、投稿は受け付けておりません。

尚、Sivajiの簡単なグルメコメントはこちらの、SINFONIA世界代表のエピキュリアン誌にも、書いていることがあります。





画像タイトル:ジョエルのスペシャリテの数々 -(298 KB)

東京レストラン紀行 06 -2 名前: Sivaji [2006/09/14,22:57:26] No.67
 さて東京も二日目です。
 狭いビジネスホテルでしたが、酒のおかげでまあ眠れました。
 付随していた朝食はカフェでのバイキングで、高級ホテルのコンチネンタルよりはるかに良心的で快適でした。
 パンは食べずに卵とソーセージとジャーマンポテトを山盛り。
 エディーさんは、一応、今回の目的とも言える試験に出かけたので、待つ間、時間潰しに取り合えず東京駅へ。
 昨日の食べ過ぎのせいか、トイレを徘徊するはめになりました。

 そろそろ昼飯時ということで、昼飯時に読む本をと90年代には関西でも発売されていたエピキュリアンと、
最近発売されていたザガットTOKYO を買いに本屋を探し購入。
 次いで昼飯を食べようと百貨店内を見るものの高い。オーストラリア牛 200g のステーキが¥3200 前後。
 ちょっともったいなく思い、東京駅の地下街を散策するも、めぼしいものは無し。
 結局、どうでもよくなり一番安そうなタイ料理屋でタイ風焼きそばを食べました。
 すこし味は薄く、辛味も足りないし酸味も少ないもののテーブルの上にプリッキーヌの乾燥物のみじん切り、
ナンプラ、酢があったので、これで好みに調味しながら食べました。まあ、昼はこんなもので十分。

 食べ終わってインターネットが出来る場所を探したものの見つからず、時間つぶしに喫茶店へ。
 この日は非常に暑く、汗だくになって時間を潰しました。

 3時にエディーさんと落ち合い、スポンサーの到着を待ち、スポンサーと合流してこの日のホテルに。
 前日とはうって変わり、この日はフォーシーズンスホテル椿山荘のエグゼクティブスイートにエディーさんと私、そしてスポンサーはもちろん一室独占で泊まりました。

 部屋の広さが違いすぎる。ソファーのある部屋でさえ昨日以上。もちろん、値段も昨日の4倍以上。
 しかし、一部屋に一本ドン・ペリニョンが付いているので、実質は−¥20000 と言う所でしょうか。
(これはアメックスのブラックカード特典かも知れませんが。)

 さて、そのホテルで汗を流し今回の東京レストラン紀行のメインイベントへ向かいます。
 今回のメインイベントは青山のジョエルです。

 ジョエルは、かのポール・ボキューズの弟子にあたるジョエル・ブリュアンさんが80年から営業されている名店です。
 ですので、ポール・ボキューズのスペシャリテを味わうのに最も適していると言えるでしょう。
 もちろん、私達も予約の段階からそれをオーダーしました。
 ただ、少し不安もあったのです。
 と言うのも、ジョエルの料理は量が多いとの噂があり、私とエディさんは大丈夫ですがスポンサーは普通の人なので、
 本来二品構成のアラカルトを数品も食べることが出来るか?と言うことがまずありました。
 そこで、まずは予約前にメールにてこちらの食べたいことを下記のように伝えました。

 『三名にて、お伺いさせていただきたい関西在住の者ですが、
その前に、少々、教えていただきたいことがありメールさせていただきます。
 ジョエルさんのアラカルトは基本的にニ皿構成となっていると思えるのですが、
食べたいスペシャリテがたくさんあり、めったに東京には行けないので、
できればこちらが選んだお料理を、コースポーションで出していただけましたらと思っているのですが、
そういうことは可能でしょうか。
 一応、現在、考えておりますのは・・・。

 ・ノルウェー産サーモンのマリネ
 ・トリュフのスープパイ包み焼き(冬トリュフ仕立て)
 ・鱸のパイ包み焼き
 ・仔羊のロースト

 の4品をコースポーションで出していただけましたらと思っているのですが、
可能でしょうか。』

 そして翌日の予約の電話でこれが可能ということになり、取りあえず量の問題はクリアー。

 もう一点の懸念は、その味の強さでした。
 上述したとおり、私は90年代に日本のミシュランとでも言うべきエピキュリアンと、その前身とも言えるグルマンの愛読者でした。
 この両書の批評において、大概のレストラン(特に関西)は塩が足りないと指摘されていたのですが、
この両書にあって塩が強いと評されていたジョエルの料理は、相当、塩が強いのではと考えていました。
 私もエディーさんも塩が強いのは好みなので問題ないのですが、スポンサーは薄味党。
 ですから私が料理を作るときもスポンサーが同席するときは薄めに作り、テーブル上にフルール・ド・セルを乗せます。
 そのスポンサーの嗜好に合うかどうか・・・。
 一抹の不安を胸にしまい、いざ出陣!

 タクシーで着いたそこは、一階がカレー屋で、二階にパリのビストロを思わせる赤いテント
(これも消防法の問題で撤去しなければならないそうです。残念。)があり、レストランがあることに気づきます。
 まるで雑居ビルのボロエレベーターと言うしかないエレベーターで二階に行くと、
それまでとは別世界の落ち着いたレストランの景色が広がります。ああ、いいレストランだな。と期待が膨らんできます。

「いらっしゃいませ、遠いところようこそ。」
と朗らかで温かみあふれるメートルの高木さんの一声。
 ああ、ストレンジャーを歓待してくれているんだなと、うれしく思いました。
 これも予約台帳すら確認していない、どこぞのホテルの中華とは雲泥の差。

 席数はそんなに多くは無いのですが、つくりは立派なレストラン。見事にハレの舞台です。
 テーブルに着席し、暑いので無作法ながらも上着を脱ごうとすると、
「今日は貸切みたいなものですから、くつろいでください。」との暖かい一言。
 もうこの時点で、ジョエルのファンになりそうでした。

 メニューは伝えてあったので食前酒のシャンパンを頂きワインだけを選びました。
 メインは羊なのですが、去年ロオジエで飲んだクロ・ド・タールの若い物が有ったので、
ブル赤好きなスポンサーのためにもボルドーではなくこちらを選びました。
 ジョエルさんがサン・テティエンヌ近郊の出身とのことで、ボルドーよりサン・テティエンヌにより近い、
ブルゴーニュのワインの方がボルドーより品揃えが豊富だったことも、こちらを選んだ理由です。

 白はオリヴィエ・ルフレーブのムルソー1erCre シャルム 01 を。 
 赤は上述したクロ・ド・タール 93 を。

 まずはアミューズ。キャビア・ド・オーベルジーヌ。なすのキャビアです。
 これは、かの有名なキャビアではありません。なすを焼いて、その中身をくりぬいたものがキャビアに似ているので付けられた名前です。
 これにオリーブが刻まれて入っています。またその入れ物がキャビアのそれを思わせるもので、
ジョエルさんのユーモアーを感じ取れて、アミューズ自体の美味しさも手伝い笑みがこぼれます。
 この段階で期待通りか期待以上であることが確信できました。

 次の皿からがコースの始まりと思いきや、メートルの高木さんが
「遠方から来ていただいたので、これもうちのスペシャリテですので是非味わってください。」
とアミューズ的な量と前菜の中間くらいの量でサービスしてくださったのは、
これもコースに組み込もうかと考えていたフォワグラのテリーヌ。
 で、これも含めて、改めてコースの紹介を。

 ・キャビア・ド・オーベルジーヌ(アミューズ)
 ・フォワグラのテリーヌ・マデラ風味
 ・ソモンのマリネ、ディルの香り 冷たいラタトゥイユ添え <ポールボキューズ直伝>
 ・トリュフのスープのパイ包み焼き ヴァレリー・ジスカール・デスタン 1975 ポール・ボキューズ
 ・スズキのパイ包み焼き、ソース・ショロン
 ・骨付き仔羊背肉のロースト

 アミューズは紹介したのでフォワグラから。

 フォワグラのテリーヌ・マデラ風味

 よくあるのはポルト風味ですが、ジョエルさんはマデラで風味を付けています。
 しかも、1930年代のマデラだとか。昨日のド・ラ・シテのテリーヌはネットリしかし味わいは軽くバニラの風味が爽やか。
 ジョエルさんのはどっしり濃厚、そしてもちろんネットリ、香りは肝とマデラの力強いもの。
 甲乙付けがたいですが、より王道を感じさせます。


 ソモンのマリネ、ディルの香り

 皿一面に薄く切られたソモン。そして皮だけをカリッと焼いたものが乗っています。
 身と皮を別に調理したところが大きいですね。皮は塩鮭のそれとほぼ同じ。日本人なら大好物で、スポンサーは大喜び。
 もちろん私も美味しく頂きましたが、それよりも美味しく感じたのがマリネ。
 しっとりと脂の乗ったソモンの旨味と香りが広がります。
 ともすれば飼料の匂いが勝ってしまうノルウェーのソモンですが、下卑たところが全く無く、
アネット(ディル)の香りが生きています。付け合せの冷たいラタトゥイユもさすがの出来栄え。
 ソモンの料理としては、キャビアール・キャスピアのソモンフュメと並び、最高峰です。

 ムルソーとも問題なく合わせられました。


 トリュフのスープのパイ包み

 ボキューズの料理の中では次のスズキのパイ包みと並んで有名な料理。
 エリゼ宮で彼が当時の大統領、ヴァレリー・ジスカール・デスタンからレジオン・ドヌール勲章を授けられた時のために作ったスープで、
それは大統領の頭を型取ったパイの形をしており、一目でわかる名物料理。

 さて、一人ひとつのこの料理。パイ皮を突き破ってスープに落としていきます。
 素晴らしいコンソメ、立ち上るトリュフの香り。野菜の旨味。そして突き落としたパイ生地の出来のよさ。
 表面はパリっと、内側はしっとり。スープに落とすとスープを吸い、またパイのバターがスープに溶け、両者が渾然一体となって行きます。

 暑いスープをフウフウ言いながら口に運び、トリュフの香りを楽しみながらパイ生地ごと頬張ると、
至福のひとときが訪れます。
 ギリギリまで塩を利かせたコンソメの力強さ。粉を食べる喜び、素晴らしいバランス。
 賞賛の声はいくら書けども止まらない、止められない。これでも時期的にベストではない。
 トリュフの季節に食べたら、いったいどれほどの感動を与えてくれたのだろうか。
 名作はやはり名作であった。ああ、ここに来てよかったと、しみじみ思いました。


 スズキのパイ包み

 上述したスープと並ぶボキューズの、そしてジョエルのスペシャリテ。
 見事に魚の格好をしたパイ包みをメートルの高木さんが体に似合わず?(これは失礼。)軽やかにデクパージュされていきます。

 デクパージュされた皿の上に乗っているのはパリっとしたパイ。横の鱗がはっきり見えるものは、魚が付いていた部分で、
その旨味をすっている部分です。

 身とパイ皮、そしてソース・ショロン(バターマヨネーズとも言えるオランデーズにトマトピュレが入ったもの。
 酢と香草も入っているので、オランデーズというよりベアルネーズ+トマトピュレかな?)を口の中でマリアージュさせると、
ここでも笑いが止まらない。美味いものを食べると顔の筋肉は緩むようです。
 まずソースが素晴らしい。重くなく、それでいてしっかり力を発揮している。
 パイ皮などの粉の素晴らしさはどうだろう。フイユテを打つのが大の苦手で冷凍パイ生地しか使わない私では絶対にたどり着けないこの粉の旨味。
(まあ、相手はプロ中のプロ。単なる趣味でやっている私に、簡単にたどり着けるもので無いことは当然ですが。)
 サクッと、しっとり。この相反することを当たり前にこなしている力量は、さすが王道フレンチと思わせる。
 無論、ワインとも素晴らしく合う。
 シャポーと言うしかない料理でした。


 仔羊のロースト

 美味しい美味しいと、二皿続いた粉を完食したので、すこし腹が膨らんできたがまだまだ行けます。
 で、仔羊。しっかりロゼ。ジュ・ダニョーにトマトピュレが一筋。

 ここでクロ・ド・タールを。昨年の88の方が上であることは事実。
 まだ少し若さを感じますが、それでもこのワインは美味しいワインです。
 香りはまだ果実が強く、羊の脂を食べた後に飲むとブランデーのように感じます。
 ブドウの強い揮発臭が立ち込めます。これはこれで快適。
 よく切れるナイフで肉を切ると如何にも美味そうな香りがします。

 さて、仔羊です。一口運ぶと、ジュがあふれ、香り高く、そして何よりしっかりと肉の味があります。
 塩はしっかりしています。これです、この肉の味を引き出しているのはギリギリまでの塩加減。
 もちろん、素材も素晴らしいのでしょう。しかし、この塩加減が完成度を高めていると思います。
 ソースは軽いです。ジュです。トマトピュレが口の中を爽やかにしてくれます。
 しかし、料理としては重厚でインパクトがあります。
 ブルターニュからノルマンディー付近で食べた、名も無きビストロの羊料理を思い出します。
 幾度も羊は食べてきました。自分でも作ります。しかし、これほどの出来栄えの羊を食べられるのは久しぶりです。
 ワインとの相性は・・・。最初からわかっていましたが、特に合うというものではありません。
 が、先に述べたように、面白みはありました。
 まあ、美味いものを並べる感覚は日本料理の日本酒と料理の関係に近いので問題ありません。
 マリアージュは楽しめませんが、最初から想定内なので十分満足です。


 さて、大分腹が膨れてきました。パイ皮が膨張し始めています。先日のインド料理の酸欠状態に近づいているのですが、チーズは別腹?
 とチーズへ。

 状態の良いチーズは、このクラスのレストランなら当然なので驚きはしません。
 ただシェーブルをしっとりと熟成させたものは珍しく、素晴らしい出来栄え。
 そしてフルム・ダンビエールを二本のチーズナイフを駆使して薄く切るメートルの高木さんの技術にうっとり。
 パリのギャルソンの姿を見ているようです。(パリのギャルソンがこの技法を用いたのを見たことは無いのですが、
こういうことを平然とこなす技術が思い起こさせるのです。そして高木さん自身もフランス人に教わったそうです。)

 よく熟したエポワス、白カビも美味しく頂きました。

 さて、デセールです。ワゴンで来ます。それとは別に厨房で作るものが数点。
 私は、ガトーショコラ、クレームカラメル、そして桃のコンポートとスープを。
 桃。つたやの丸ごと一個での恐怖感がありましたが、魅力に負けてオーダーしました。
 出てきてびっくり。量が多い。でもうまい。
 クレームカラメルもパリのそれに近いです。カラメルが良く出来ています。
 そして何よりガトーショコラ。
 昨日のシテの物とはうって変わり、最下層は米などを使いサクサク、パリッとした食感。
 そして上の二層に分かれたムースは重厚、濃厚、チョコレートの香り爆発。
 この食感の違いを楽しませる考えは秀逸で、上層部の濃厚なチョコレートのムースを飽きさせずに食べさせる見事な工夫だと思います。

 さて、ここまで完食して、やはり来た来た酸欠状態。
 パイがどんどん腹の中で膨らんでくる。それとも桃を食べたせいか、つたやでの暗示が復活したか。たぶん後者か両方でしょう。
 しかしそれでも食後酒を。

 私はオールド・トゥイニーポートを頼み、エディーさんはマールを。
 そして食後酒までは飲めないスポンサーにも寂しいからと、
高木さんのサービスでジョエルさんの私物?の1800年代のオールド・グラン・マニエを少し頂きました。
(事がバレて、高木さんがジョエルさんに叱られませんように。)

 トゥイニーは美味しかったのですが、ヴィンテージに比べると酸が少ないので酸欠状態の私には辛くエディーさんに飲んでもらいました。
 エディーさんはガトーショコラで完全復活され、イケイケ状態で、パルタガスの 8-9-8 を吸い始めてます。
 私はスポンサーのグランマニエを少し頂きました。毎日このリキュールが欲しい。
 調子がよければ、これとシガーをあわせたかったですね。

 全て食べ終え、期待以上であったことに大満足。
 味の強さの心配も杞憂でスポンサーも大満足。
 料理はもちろんですが、何よりメートルの高木さんのハートフルなサービスのおかげで寛いで、そして楽しく過ごさせていただきました。
 私たちはジョエルを訪れるのは初めてです。でも、もう何年も通いつめているような錯覚を起こさせてくれるサービスでした。
 料理の説明なども、こちらから聞いたことに対しても
「ちょっと、お待ち下さい。聞いて来ます。」
なんてありません。
 作り方をはじめ知識も完璧、また自信を持ってジョエルのスタイルについて説明される姿を見て、
中と外が完璧に機能し信頼しあっているんだなと感心しました。
 本当に素晴らしいレストランでした。


 この二日。
 ビストロ・ド・ラ・シテも、ここジョエルにも共通して言えることは、共にパリの、フランスの風を感じたということ。
 チマチマした小手先のテクニック。見た目だけ格好だけの料理ではありません。
 サービスもしかり。自然体で、客を楽しませることに心配りが出来ている。
 ただし、この両店は共に、フレンチ慣れしていないと高い評価は下せないかもしれません。
 見た目だけの美しさ、雰囲気のよさだけを求めては、この素晴らしさは理解できないでしょう。
 しかし、こういうレストランが共に20年以上存在し続ける東京の客層のレベルの高さに感心し、
こういうレストランを近くに持っている羨ましさでいっぱいになりました。
 客がレストランを育て、そのレストランが新たな客を育てていく。
 食い倒れとか食は大阪とか言いながら、大阪の誇る料理は何?と聞いて、
お好み焼きとか、たこ焼きとしか答えられない大阪の文化レベルの低さは情けなく思い、
と同時に、東京のこのレベルには永遠に到達しないのではないかと失望させられました。

 無論、いいレストランは大阪にもあります。しかし、やはりパリを感じさせてくれるところは少ない。
 レストランで霜降り牛をありがたがって食べる客のなんと多いことか。
 もう少し、挑戦する心意気を持って欲しいです。世の中、美味いものはたくさんあります。
 霜降り牛一辺倒の思考法から脱却することで、新たな世界が見えてくるのですが。

 少しグチになってしまいましたが、とにかく、ビストロ・ド・ラ・シテではパリのビストロを、
そしてジョエルではパリのレストランを思い起こさせていただき、素晴らしいレストラン紀行になったことに感謝しております。

 さて、食後はホテルでアレキサンダーを飲みながらパンチパンチを。
 少し酸欠は解除されましたが、この日はこれで終了しました。

 東京レストラン紀行 06 も、残すところあと一日です。


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