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  アドール大陸の東端に、その豊かな半島−アルカディア半島−は存在している。大陸の覇者であり皇帝であったホーディン暗殺後に起こったアドールの内乱は、アルカディア半島にまで飛び火し、半島内にも内乱の嵐は巻き起こった。半島の太守であった漠が亡き後、その内乱は激しさを増したが、西方聖堂騎士団の一員でもあり、誇り高き聖杯騎士でもあった漠の息子により、半島の内乱は鎮められ、ようやくアルカディア半島に平穏な日々が戻りはじめていた。
  人々は戦いで傷ついたが、豊かな半島の大地は人々に実りをもたらし、わずかな期間で昔日の栄華を取り戻しつつあった。ここ、魔法都市オーガンも、内乱以前となんら変わらぬ繁栄を取り戻しつつあった。魔法を忌み嫌った皇帝ホーディンにより迫害された魔術師たちは、先代の太守・漠に保護され、この地に集い、魔法ギルドによる自治を行っていた。その恩がある故、彼らは内乱に際しても太守に協力し、太守亡き後は、その息子に忠誠を誓い、その半島統一にも尽力した。特に、積極的に動いたのはギルド自治委員会、唯一の女委員であったヘカテという魔女であった。

  半島の統一は成された。しかし、大陸内の内乱は続いており、群雄は割拠していた。そのため、新しく王になった太守の息子は他の群雄との外交に奔走し、半島の統治は宰相に委ねられていた。王の義兄にもあたる宰相は、著名な政治家であり半島内の治安になんら問題はないように思われていた。

  そんな中、オーガン魔法ギルド内の一室で、深刻な話題が持ち上がっていた。

「ヘカテが消えた。あの禁断の書物を持ち出して。」

  ギルドの委員達にとって、それは知られてはならぬことであった。

「ヘカテを捕らえよ。あの書物が公になってはならぬ。」

  ギルド委員会が出した結論はそうであった。

アドール暦 37年、春のことである


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